「仲良しですね。 部長と奥様。 羨ましいです。 空気の様に漂う・・・かぁ。 空気も過去も漂うんですね」
ただ、部長の話を聞いて、ますます美紗と結婚したいと強く思った。 部長は、何だかんだ楽しそうで幸せそうだから。
「何?? 空気も過去も漂うって。 佐藤くん、夢変わった?? この正味3分で?? 詩人にでもなりたいの??」
確かに自分で言っていて『意味分かんねぇな。 気持ち悪いな』と思った言葉を、部長がすかさず拾う。 さすが、営業部長。 会話は切らせない。
「ワタシの言葉じゃないです。 言われたんですよ。 ある人に『流れるのは時間だけで、過去は水に流れて行ってくれない。 過去はその場に留まって未来に漂ってくるもの』みたいな事」
「それ言ったの、木原さんじゃないよね?? 彼女、そういう事言うタイプじゃないもんね。 オレ、哲学好きの名言吐きたがりなヤツ、好かんわー。 そいつの胸倉に潜り込んで『はぁ?? 何言っちゃってんの、オマエ』って下から顔覗きこんでやりたくなるくらい、好かんわー」
部長が『ケッ』と白けながら笑った。



