漂う嫌悪、彷徨う感情。


「ナメてません!! チャ・・・チャーミングじゃないですか」

営業たるもの、部長に言われた通り、即座に言葉を取り繕う。

「チャーミングぅ??!」

が、オレのチョイスした言葉は部長には受け付けなかったらしく、部長に細い目を向けられた。

「ダ・・・ダンディ。 そう!! ダンディです、部長!!」

慌てて違う言葉をひねり出したものの、またも言葉選びを間違ったらしく、

「このハゲ頭がダンディってか?! ウチのヤツが、この前熱出したオレに冷えピタ貼ろうとして、貼る位置に迷いやがって『ご自分でどうぞ』って諦められてセルフサービスにさせられたこの頭がか?! なんで何十年も一緒にいて旦那のオデコの位置を見失うんだよ。 最悪分からなかったら眉毛のちょっと上にそっと貼ればいい話じゃねえか。 なぁ??!」

部長に『はい』などと返事が出来るわけもない話の同意を求められてしまった。

美紗の話をしていたはずなのに、何故部長の頭皮問題に話がすり替わってしまったのだろう。