漂う嫌悪、彷徨う感情。


「そういう事ではなく・・・」

「え?? じゃあやっぱり結婚しないの?? 何?? どっち?? するの?? しないの??」

どう説明すれば良いのか困惑しているオレに、部長がグイグイ突っ込んでくる。

「したいです。 ワタシは」

とりあえず、目の前の質問に答えると、

「え?? 希望?? 何『したいです』って。 『します』じゃないの?? 佐藤くん、将来の夢語ってるの?? しかも、倒置法で」

部長が困り果てるオレを面白がりだした。

「部長。 真面目に聞いて下さいよ。 真剣に話してるんですから」

「ごめーん。 だってちょっと羨ましくなっちゃってさー。 オレにはもうないもん、嫁へのそんな熱い感じ。 嫁にとってもオレなんか漂う空気の様なもんだと思うしねー。 『あって当たり前』みたいなさー」

『つまんなーい』と唇を尖らす部長。 キモイを通り越し、いよいよ不気味。