漂う嫌悪、彷徨う感情。


「・・・何がどうなってるんだよ」

岡本の顎から手を放し、美紗のデスクに向かう。

「木原さん、ちょっと来て」

美紗の都合もお構いなしに、美紗の二の腕を掴んでそのまま会議室に引っ張り込んだ。

ドアを閉め、美紗の二の腕を解放すると、

「どうしたんですか?! いきなり」

美紗が眉を顰めてオレを見た。

「こっちのセリフだよ。 どういう事だよ」

「・・・何の事ですか??」

オレの質問にとぼける美紗。

「変な噂が立ってる。 美紗の耳にも入ってるんだろ?? 誰がこんなデマ・・・。 美紗、心当たりない?? 岡本は小田さんから聞いたって言ってた」

「・・・犯人を捜してどうするの?? 破談になった事は間違いないんだから、別にいいじゃないですか」

噂を流した人間ではなく、そいつを突き止めようとするオレを煙たく思っている様子の美紗。

「何言ってんの?! 全然良くないだろ!! 美紗が浮気したって事になってるんだよ?!! 冗談じゃねえわ。 許せねぇわ」

噂を流布したヤツにも、美紗の態度にもイライラして、つい大きな声を出してしまった。