漂う嫌悪、彷徨う感情。


泣きじゃくる美紗に、テーブルの隅に置いてあったボックスティッシュを手渡す。

美紗はそれを『ありがとうございます』と受け取ると、そこから何枚か引き抜き、メガネを外して涙を拭った。

美紗の目の周りは少し皮が剥けていて、痛々しかった。

なんで美紗がこんなに泣かなければいけないのだろう。 なんでオレがこんな目に遭わなければいけないのだろう。

全部全部、真琴のせい。 真琴への怒りが蘇る。

ふと、痛々しい目をした美紗が壁に掛けられた時計を見上げた。

「佐藤さん、30分後にアポ入っていませんか?? 朝、Outlookの佐藤さんの予定に確か商談の予定が書かれていたと思うのですが・・・」

美紗はいつも、自分の予定だけでなく営業の人間のスケジュールもチェックしていた。 営業の予定を気にかけてくれる美紗は、営業に指示をされる前に必要な書類を揃えたりする気遣いが出来る為、みんなから信頼されていた。