「待ってよ。 勝手に1人で結論付けるなよ。 オレの気持ちは無視すんの?? オレはしたいよ。 美紗と結婚したい。 今そんな気持ちになれないなら、延期したっていいと思う。 取りやめる事ないだろ?? オレ、待つから。 いくらでも待つから」

だけどオレは、どんな壁もよじ登るし叩き壊す。

だって、美紗へのあのプロポーズはノリでもなければ、流れでしたわけでもない。 オレの一世一代だったんだ。

「・・・いくらでもなんて待たせられるわけないでしょ。 ・・・あれからずっと考えてた。 佐藤さんの事。 佐藤さんの両親の事。 ・・・真琴ちゃんの事も。
佐藤さんの事が大好きで、ワタシなんかに優しくしてくれる佐藤さんのお母さんとお父さんの事も大好きになって・・・。 あんなに可愛がってもらったのに、『真琴ちゃんを産んだ人なんだ』って思うと佐藤さんの両親が怖くなった。 佐藤さんの事も、『真琴ちゃんのお兄ちゃん』って考えるだけで苦しいの。
こんな色眼鏡で人を見るワタシなんか嫌でしょう??! ワタシも自分自身が嫌で嫌で仕方がない。 何も悪くない人に嫌悪を抱いて不義理を通す自分を最低だと思う。
だから、ワタシの為になんか待つ必要ないんです。 いつになるのか分からない時間を待たせるなんて出来ない。 佐藤さんにはもっと素敵な人がいる。 ワタシとじゃ幸せになんかなれない。 幸せになって欲しい。 佐藤さんは。 絶対に」

美紗が、泣き腫らせた目から涙を零した。

美紗は、オレのプロポーズが一世一代のものと分かっていた上で、真剣に考えた末の『破談』の申し出だった。