和馬は真琴を見下ろすと、
「無理だって言ってるじゃん。 しつこいよ、真琴」
真琴の言葉を引用して、自分に絡みつく真琴の腕を解いた。
「・・・何なのよ。 みんなでワタシを責め立てて。 ワタシの事を吊し上げてそんなに楽しい?!! 最低!! 酷すぎる!!」
真琴は泣きながらオレと和馬に怒声を浴びせると、2階にある自分の部屋に駆け上がって行った。
さっきオトンに『出て行ってやるよ』と息巻いていたくせに、尻尾を丸めて自室に引っこんで行く妹に呆れる。
「・・・とんだ醜態を晒し、あなたに失礼な事まで・・・しかも家にも上げずに玄関で・・・重ね重ね本当に申し訳ありません。 家の中にお通ししたいのですが、中もちょっとゴタついておりまして・・・」
和馬に頭を下げながら溜息が出た。
なんであんな訳の分からない女がオレの妹なのだろう。 真琴の存在が、佐藤家の恥としか思えない。 しかも、謝罪も玄関。 失礼極まりない。 でも、家の中ではまだオカンが泣いているだろうし、オトンの怒りも収まっていないだろう。 もう、ここでお詫びするほかなかった。



