漂う嫌悪、彷徨う感情。


「・・・ワタシは、いじめたつもりはない」

認めたら和馬を失ってしまう事が分かっている真琴が、無理にも程がある『悪意の無さ』を主張し出した。 ここまでくると、認めなくとも和馬は離れて行くだろう。

「・・・そっか。 真琴は、美紗ちゃんが傷付く事は予想出来なかったんだね。 なんか怖いわ。 悪意があっていじめるのも嫌だけど、いじめの自覚なく、悪意なしにそういう事が出来るって・・・オレとは感覚が違い過ぎる。 ・・・オレ、真琴と一緒にいるの、ちょっともう無理だわ」

和馬の言わんとしている事は、『真琴との同棲のお断り』ではなく、『別れ』だった。

「・・・なんで?! 嫌だよ!! ワタシは和馬と一緒にいたい!! 何なの、美紗!! 10年も前の話を穿り返してネチネチネチネチ。 しつこい!!」

真琴は、この場にいない美紗に対して怒りを露わにし、『逃すまい』と和馬にしがみついた。