漂う嫌悪、彷徨う感情。


日下さんと2人で、勇太くんから少し離れた席に座る。

2人で『いただきます』と手を合わせ、早速朝食を口に運ぶ。

『味噌汁のだし、最高。 沁みるー』『朝から幸せ』と2人で朝食の美味しさに頬を綻ばせた。

そんなワタシたちを横目に、勇太くんは淡々と食事を済ませて大広間を出て行った。

「美紗ちゃん、分かってる?? 美紗ちゃんが今してる事って、オレが真琴の店でやった事と同じ事だよ。 異性と仲良さ気なところを目の当たりにさせるって、決定打だよ」

勇太くんが出て行った方に目を向けながら、ボリボリと良い音を立ててお新香を咀嚼する日下さん。

「今更ですよ、日下さん。 決定打なんて、日下さんとワタシが温泉旅行をしている時点で既に放たれているじゃないですか。 折角の楽しい旅行です。 今ジタバタしたくないんです。 ワタシは満喫してますけど、日下さんは楽しめていますか?? 余計な事は考えずに、楽しみましょうよ」

日下さんがあまりにも美味しそうな音をさせながらお新香を食べるから、ワタシもお新香に箸を伸ばした。

今回の旅行の目的は『現実逃避』。

予想外の勇太くんの登場に、完全に現実を忘れる事は出来なかったけど、今は考えたくないんだ。

『家に着くまでが遠足』。 だから、『家に着くまでが日下さんとの温泉旅行』。

家に帰るまで、現実から距離を置いていたいんだ。