「・・・美紗ちゃん、言い方。 ・・・つか、それな。 旅館の朝メシってまじで美味いよね。 でも眠いの。 どうしても眠いの。 だってほら、美紗ちゃん運転出来ないじゃん。 帰りもオレが運転じゃん。 事故らない様に寝とかなきゃじゃ・・・ん・・・」
眠気の余り、ワタシに嫌味を返しながらも話の語尾が消えゆく日下さん。
「運転に関しては返す言葉もないんですけど。 本当に申し訳ないと思ってますけど。 でも、ワタシたちのプランって、『ゆったりプラン』だったじゃないですか。 チェックアウト13時ですよ。 食べてからまた寝たらいいですよ。 朝食食べないなんて、もったいないですって」
「~~~もーう!! 美紗ちゃんの食いしん坊!! 行くよ行くよ!! 行けばいいんでしょ!!」
寝かそうせずに、しつこくうるさいワタシに観念した日下さんが、ガバっと上半身を起こした。
薄ら開いた日下さんの目に自分の顔が映った事を確認して、
「一緒に食べましょうよ、日下さん。 おはようございます」
やっと朝の挨拶を。
「・・・オレも早く彼女見つけよ。 ・・・やっぱりいいよね。 好きなコに『おはよう』って言ってもらえる朝って。 おはよう、美紗ちゃん。 行こっか。 大広間」
小さく笑って挨拶を返してくれた日下さんが起き上がり、立ち上がると旅行鞄を跨いで襖を開けた。
どうやら鞄に入れられたお金には気付いていない様子。 良かった。
「待ってくださいよ。 置いていかないでくださいよ」
慌ててワタシも腰を上げ、日下さんを追って部屋を出た。



