漂う嫌悪、彷徨う感情。


「やめてやめて!! 鼻水付いちゃう!! 下手したら鼻くそもつくから!! 日下さんを嘘吐き呼ばわりした事、陳謝致しますから!!」

自分の鼻の穴に刺さった日下さんの指を即座に抜き取り、近くにあったティッシュボックスからティッシュを引き抜くと、執拗かつ入念に日下さんの指を擦り拭いた。 というか、手洗いしてきて欲しい。

「だから、そういう事言わなくていいっつーの!! 美紗ちゃん、女の子でしょうが!! 思った事全部口にしちゃダメ!! 鼻くそとか言っちゃダメ!! つか、そんなに拭かなくていいから。 指の皮剥けるから。
・・・正直言うとね、美紗ちゃんが真琴のお兄さんのところに行くの、今も超心配なんだよ。 真琴の事だけじゃなくて、真琴の両親とも上手くやっていけるかな?? って。 後々介護が必要になった時、真琴の両親に痴呆や更年期が始まった時とか、辛く当たられる事だってあると思う。 ただでさえしんどいのに、『自分を虐めた人間の親』っていうのが頭にあると、余計に厳しいんじゃないかなって。
でも、美紗ちゃんが真琴に関して何らかの妥協点を見つける事が出来たなら、それも何とかなる事なのかもしれないな。 とも思う。
まぁ、オレは美紗ちゃんに振られた部外者だから、何ともならなかったとしても関係ないんだけどね」

眉間に皺を寄せながら笑った日下さんが、ワタシの手からティッシュを奪い手のひらで丸めると、ゴミ箱に投げ入れた。