「ずるいね、美紗ちゃん。 オレを善人に仕立て上げて手を出させない様にして」
日下さんが、しょっぱい笑顔を見せながら、ワタシの肩から手を退けた。
「ワタシが男の人の力に敵うわけがない。 しかもワタシは逃げてもいない。 やろうと思えば出来るのに、実行しないのは日下さんの意思でしょ?? ワタシは日下さんを善人に仕立て上げたつもりないです。 そもそも日下さんは善人なんです」
ワタシの言葉に日下さんが、『美紗ちゃん、本当にずるい』と言いながら頭を掻いた。
「・・・オレも真琴のお兄さんに会ったんだ。 さっき。 お風呂で。 だから、隣の部屋に真琴のお兄さんがいる事、オレも知ってた。 真琴のお兄さんに『楽しんで旅行されているのだとは思いますが、万が一、美紗が嫌がる事があった場合、ご容赦いただきたい』って頭下げられたよ」
日下さんが、佐藤さんがいるだろう隣の部屋の方に視線を向けた。
勝手な行動ばかりしていたワタシを、勇太くんが気に掛けてくれていた事に胸がきゅうっとして、そんな勇太くんの言葉を汲んでくれた日下さんの優しさに目頭が熱くなる。



