漂う嫌悪、彷徨う感情。


「・・・違うよ。 『ご厚意』じゃない。 オレは普通に美紗ちゃんに『好意』を持っているから、温泉に誘ったんだよ。 好意を持っていなかったら慰めようと思ったりしない」

日下さんが少し前傾姿勢になり、ワタシとの距離を詰めた。

「だとしたら、尚更してはダメです」

だけどワタシは詰められた分の距離を後ずさる事はしなかった。

「どうせしようがしまいが、どんな言い訳並べようが、真琴のお兄さんは『ヤッた』と思うだろうね。 だったら別にいいじゃん。 それに、分かんないじゃん。 美紗ちゃんの気持ち、オレに傾くかもしれないじゃん。 ねぇ、見せてよ。 『張り切り感の少ないそこそこお高い下着』」

日下さんがワタシの肩に右手を乗せ、圧を掛けた。

だけど、何も怖くなかった。

「佐藤さんが信じてくれなくても良いんです。 ワタシが自信を持って『何もない』と言い切れればそれで良いんです。
日下さんはこれ以上ワタシに手を出さない。 日下さん、良い人だもん。 良心が許さないはずだ。 『砦になる』って言ってくれた人が、そんな事をするわけがない。
日下さんは本当に良い人です。 そんな人がエッチで心傾く様な女に引っかからないでください」

ワタシには、『この人はワタシを押し倒したりしない』という確信があったから。