漂う嫌悪、彷徨う感情。


「・・・佐藤さんを、好きじゃなくなれる気配がないんです。 日下さんと関係を持っても、この気持ちが消える気がしないんです。
快楽は味わえると思うんです。 そういうつもりで旅館に来ているので。 ただ、そうなった後、自分の気持ちが日下さんに向かって行かなかった場合、あんな事をしてしまったから戻る事は出来ないと分かっているし、自分自身、戻りたいのかどうかも分かっていないんですけど・・・だから、こんな事を言う必要も言う機会もないかもしれないんですけど、佐藤さんに『ワタシは日下さんとは何もなかった』と言えなくなってしまうのが嫌だと思いました。
日下さんだって、傷心のワタシを慰ようとしてくれただけのご厚意なわけなのに、勝手に後悔されたら良い気しないでしょう??」

「ご厚意て。」

苦笑いをしている風の日下さんの目は、笑っていなかった。