漂う嫌悪、彷徨う感情。


ワタシだって一応女だ。 守って欲しい願望もあれば、『守るよ』などと言われれば嬉しくなる。

この人、ワタシの事を好きなのかな?? という錯覚にさえ陥る。

もし、日下さんが真琴ちゃんの元彼でなかったら、ワタシは日下さんの事を、何の懸念もなく、勇太くんへの気持ちを吹っ切って好きになれただろうか。

・・・勇太くんへの気持ちを吹っ切って・・・。

・・・どうやって??

「・・・立ち向かうのも逃げるのも一生懸命なら、追いかける事も一生懸命なのかな」

だってワタシは、勇太くんが旅館までワタシの事を追って来てくれた事が、本当は嬉しかったんだ。 どうせ逃げなきゃいけないのに、嬉しかったんだ。

「・・・それは、真琴のお兄さんの事?? ・・・美紗ちゃんはさ、逃げたいんじゃないの?? 立ち向かいたいの?? どうしたいの??」

ワタシを撫でる手を止め、怪訝な表情でワタシを見る日下さん。

・・・どうしたいのか。 自分にも分からない。

真琴ちゃんからは逃げたい。 でも、勇太くんから離れるのが、やっぱりどうしても辛い。

「・・・・・・」

答えあぐねていると、

「夕食の準備が整いましたので、お運びしてもよろしいでしょうか??」

沈黙を破る様に、襖の向こうから仲居さんの声がした。