部屋に戻ると、日下さんはまだ横になったまま、すやすやと寝息を立てていた。
買ったお土産を鞄に片し、日下さんの近くに座り、日下さんの寝顔を眺めながら、勇太くんのさっきの言葉を思い出す。
『なんで他の男と温泉に来てるんだよ』
勇太くんはこの問い掛けに対して、ワタシの答えを聞かなかった。
聞かなくても分かっていたからだろう。
「はぁ・・・」
肺が無意識にやるせない溜息を押し出す。
「・・・美紗ちゃん、温泉に来てまで溜息吐かないの!! 顔にかかってるっつーの」
日下さんが、目を閉じたまま口を開いた。
「すみません。 起こしちゃいましたね」
『やばいやばい』と右手で口を押えつつ謝ると、
「美紗ちゃんが部屋に戻ってきた時、なんとなく気配で起きてはいたんだけど、どうにもこうにも目が開かない」
日下さんが、ぴったりくっついている瞼を擦りながら、起き上がろうと床に手をついた・・・が、上半身を起こす事さえ出来ない日下さんは、産まれたての小鹿の様にプルプル震えていた。
日下さんは、寝起きがあまり良ろしくないらしい。



