漂う嫌悪、彷徨う感情。


「温泉と海鮮料理を堪能しに・・・「何それ。 そんな事、中学生でも言わないよ。 中学生だって、男女が2人きりで温泉に行くって事がどういう事なのかくらい分かるわ」

言い切る前に勇太くんが言葉を被せた。

「日下さん、言ってました。 『傷ついている人の傷口を抉る様な事はしない』って。 日下さんは・・・「言っちゃう?? 『日下さんはそんな人じゃありません!!』って、純粋ぶった女子が使うお決まりの台詞、美紗も言っちゃう?? それとも『ワタシはそんなつもりじゃなかった』とか言う?? いるよね、そういう事言いながら男を自分の部屋に呼んだり、平気で男の家に上がったりする女。 それって、仮に本当に男の方にその気がなくて、一切手出しされなかった時に、女側が自分の体裁を守る為の保険だろ?? もしくは、奥手な清純派を装いたいのかもしれないけど、そもそもそういう子はそんな事しないからね。 オレ、美紗はそういうタイプじゃないと思ってたのにな」

反論するワタシの言葉を、悉く遮る勇太くん。

もう、何を言っても伝わらない気がした。 どんな言葉を使っても、勇太くんには嘘にしか聞こえないのだろう。

「・・・ワタシ、部屋に戻ります」

勇太くんに軽く頭を下げ、お土産コーナーから立去ろうとすると、

「待って。 まだお土産決めてないんだろ??」

勇太くんがワタシの手首を掴んだ。