漂う嫌悪、彷徨う感情。


突然現れた勇太くんに、驚きと、しつこく残る恋心とで、心臓が激しく跳ねた。 お風呂上りという事も相俟っているのかもしれない。

それに被せてくるかの様に、切なさが押し寄せて、チクチク痛いのか締め付けられて痛いのかも分からないくらいに胸が苦しくなった。

「・・・ワタシの胃はそんなに小さくないので」

4分の1カットのおまんじゅうを食べ切ることさえ躊躇していたくせに、『余裕です』くらいの言い訳をして、少し勇太くんから離れると、黒目と首を動かし周りを見渡した。

「・・・和馬くんに、オレと一緒にいるとこを見られたら困る??」

甘いものがあまり得意ではない勇太くんが、右頬におまんじゅうを頬張ったまま喋る。 なんか、リスみたいで可愛い。 飲み込めもしないなら食べなきゃいいのに。

薄ら笑うのを堪え、

「小田ちゃんに見られたら困るんです!! いい気しないでしょ」

おまんじゅうの棚に身を隠しながら小田ちゃんの姿を探した。