漂う嫌悪、彷徨う感情。


「あの。 今日は美紗ちゃんに楽しい時間を過ごしてもらう為の旅行なんです。 それだけはご理解ください。 お願いですから、台無しにしないでください。 ぶち壊さないでください。 お願いします」

ワタシに手を引かれながら、日下さんが勇太くんに向かって鋭い目をしながら『お願い』をした。

しかし、日下さん眼光がどう見ても『お願い』をしている様には見えず、限りなく『牽制』に近かった。

そんなご立腹の日下さんを連れ、予約していた部屋に向かう。

ワクワクしながら部屋の扉を開くと、

「わぁー。 凄い!! 広い!! 豪華!!」

畳のいい香りのする、見晴しの良い綺麗な部屋が目の前にあった。

「気に入って頂けましたでしょうか??」

先にワタシたちの荷物を運んでくれていた先程の仲居さんが、お茶を用意しながらワタシたちが来るのを待っていた。

「大満足です!!」

仲居さんに興奮を伝えつつ、『ね??』と同意を求める様に日下さんを見上げると、さっきまで怖い顔をしていた日下さんが嬉しそうに笑った。