「・・・オレ、美紗を虐めた人間の兄ですよ?? それでも、美紗の手を握っていてもいいんですか??」

美紗のお母さんは、オレに嫌悪感はないのだろうか。

「・・・確かに引っかかるわよ。 美紗を虐めた女の兄って部分は。 だけどね、ワタシの大切な娘を『大好きだ』『素敵な人だ』って言ってくれる人を憎むなんて事、ワタシには出来ない。 どうしたって嬉しいんだもの」

泣いていた美紗のお母さんが、オレに笑いかけてくれた。

そんな笑顔を見たら、何だか胸が熱くなって、今度はオレの目から涙が出てきてしまった。

「ちょっと、泣いてる場合じゃないでしょ!! 早く美紗を崖の上に引き上げてやって。 美紗の手、肩脱臼したくらいで放したりしたら怒るからね」

美紗のお母さんが笑いながら、ティッシュでオレの顔を拭いた。

「ありがとうございます。 腕、引き千切れても美紗の手を掴んでいたいです」

泣いてしまった事が恥ずかしくて、無理矢理笑顔を作ると、

「うん。 美紗の事、どうか宜しくお願いします」

美紗のお母さんがオレの頭を撫でてくれた。

美紗のお母さんの手が、心が温かすぎて、やっぱり涙が溢れ出した。