漂う嫌悪、彷徨う感情。


「それは違います。 オレ、美紗がお母さんを悪く言っているところなんて、1度も見た事がないです。 独りよがりの愛情表現なんかじゃないです。 ちゃんと美紗に届いてました。 美紗、自分の為に懸命に働いてくれたお母さんに感謝していました。 美紗がいつも笑顔でいたのは、お母さんの事が大好きだからですよ。 作り笑顔じゃないと思います。 大好きだからこそ自然に零した笑顔だったと思います。 ・・・て、その時の美紗の笑顔を見たわけでもないオレが言っても説得力ないんですけど・・・でも、絶対そうだと思います。 美紗はそういう人です。 そういう素敵な人です」

テーブルの隅に置いてあったティッシュボックスを、美紗のお母さんの傍に置くと『ありがとう』と、美紗のお母さんがそこから2、3枚引き抜き、涙を拭った。