「・・・ワタシね、親バカなんだけどね、美紗の事『自慢の娘』だと思っているの。 ワタシ、離婚してからずっと『美紗はワタシ1人で立派に育て上げる』って意地になってた。 お金に困らせる様な事はしたくなくて、昼夜構わず働いてた。 そんなワタシを見て育ったせいで美紗、『お母さんは毎日お仕事頑張ってくれているから、家の事はワタシがする』って、小学校の頃から家事全般をやってくれてた。 申し訳ないなって思いながらも、勇太くんとの結婚が決まった時にね、『美紗にたくさん苦労をかけてしまったけれど、おかげで嫁入り準備は万端だ。 これで良かったのかもしれない』って、自分に都合よく考えていたの。
・・・全然気付かなかった。 美紗、ワタシの前ではいつも『お仕事ご苦労様』って、毎日笑顔だった。 笑顔の美紗しか思い出せない。 全部隠して笑ってくれていたのね。 辛かっただろうに・・・。
ワタシ、美紗が必死に働くワタシの姿に喜んでくれていると思っていたの。 ワタシ自身もね『美紗の為なら何でも出来るのよ。 頑張れるのよ』って、体現しているつもりだった。 ・・・独りよがりな愛情表現よね。
忙しそうに振る舞ったせいで、美紗に気を遣わせて何も言えなくさせてしまった。 母親らしい事を何もしなかった上に、甘えさせる事も悩みに気付いてあげる事もしなかった。 ・・・最低。 本当に最低な母親だ」
美紗のお母さんが、テーブルの上で拳を握りしめた。
美紗のお母さんの目から落ちた涙が、テーブルに落ちて広がった。



