漂う嫌悪、彷徨う感情。


「・・・・・・赦せない」

後頭部から、美紗のお母さんの震えた声が聞こえた。

「本当に申し訳ありませんでした。 何をしたら美紗への償いになるのか分かりませんが、でもオレに出来る事なら何でもします。 ・・・本当は美紗と結婚したいです。 だけど、美紗が妹と家族になるのに抵抗があるのは当然だと思います。 美紗が嫌がる事はしたくない。 だけど、美紗とずっと一緒にいたい。 ・・・すみません。 何を言っているんだろ、オレ。 矛盾してますよね。 本当にすみません」

謝罪中に自分の自分の願望を挟み込む馬鹿な自分が、本当に嫌になる。

そんなオレに、美紗のお母さんだって嫌気が刺しただろう。

「・・・言っている事が滅茶苦茶ね。 ・・・本当に赦せない」

美紗のお母さんが、嫌悪感を露わにした。

「本当に申し訳ありません」

「・・・勇太くんを赦せないんじゃないわよ。 美紗を虐めたのはあなたじゃないでしょ。 勇太くんの妹でしょ。 ・・・美紗は、何をされたの??」

『ねぇ、しっかり視線を合わせて話しましょう。 ちゃんと聞かせて欲しい話だから』と、美紗のお母さんがオレの肩を掴んだ。

逸らしちゃいけないと思った。

美紗のお母さんの視線から逃げてはいけないと思った。