漂う嫌悪、彷徨う感情。


「美紗は何も悪くありません」

顔を左右に振り、美紗のお母さんの疑念を否定する。

「・・・じゃあ、どうして?? 勇太くんの問題なの??」

「・・・オレは、結婚したいです。 美紗の事、大好きだから。 大切だから」

諦められない思いが、口をついてしまう。

「だったら尚更どうしてなの?? 何があったの??」

美紗のお母さんが真相を知りたい気持ちは当然。 『結婚出来なくなりました』『あ、そうですか』で済むわけがない。

ただ、美紗と『誰にも言わない』と約束をしてしまった事を、美紗のお母さんに喋っていいものか・・・。

・・・だけど、オレが美紗のお母さんの立場なら、絶対に知っておきたい。

「・・・今からする話は、美紗に口止めをされている話です。 誰にも知られたくない、プライドのかかった話だと美紗が言っていた話です。 ・・・でも、美紗は自分のプライドというよりは、オレの体裁を守りたくてそう言っている気がするんです。 だけど、美紗に了承を得ていない。 だから、オレが話す事はどうか美紗の前ではしないでください。 オレが怒りの全てを受け止めますから」

美紗のお母さんに、話そうと思った。 美紗のお母さんが、美紗のプライドを汚すわけがないから。