「・・・なんか、すみません。 これ、良かったら・・・」
美紗のお母さんの心遣いに、余計に申し訳なさが込み上げる。
美紗のお母さんに菓子折を手渡すと、
「全然!! 勇太くんが来てくれるのが楽しみで、勝手に作っちゃっただけだもの。 迷惑だったらごめんね。 お菓子、ありがたく頂戴します」
美紗のお母さんが、それを頭の上に持ち上げながらお辞儀をして笑った。
陽気で、快活で、優しくてお茶目な美紗のお母さん。
美紗と結婚しようと思った時、美紗のお母さんの事も大事にすると心に決めたのに・・・。
「・・・オレも有難く御馳走になります。 オレの好きな物ばっかり・・・。 ありがとうございます」
「どういたしましてー。 とりあえず、食べてからお話聞かせて」
『座って座って』と美紗のお母さんがダイニングの椅子を引いた。
美紗のお母さんが『話は食べてから』と提案してくれて良かった。 食べながら話せる楽しい話ではないから。
椅子に座り、『いただきます』と手を合わせると、好物である豚の角煮に箸を入れる。
良く煮込まれた豚肉は、簡単に箸で一口大に切れ、口に入れるとトロトロにとろけた。
美味い。
オレなんかの為に手間暇をかけて作ってくれた美紗のお母さん。
どうしてオレは、こんなに優しくてあったかい人を悲しませなければいけないのだろう。



