真琴の言葉が腑に落ちない。
確かにオレが知っているのは今の美紗だけで、昔の美紗がどんな人間だったかは分からない。
でも、『イケメンだから』『上司だから』と特別に態度を変えず、男も女も年上も年下も関係なく親切に接する美紗を嫌うヤツなど、会社にひとりもいない。
「・・・なんで嫌われてたの?? 美紗は」
「超陰気じゃね?? アイツ。 近くにいるとこっちの空気も淀むって皆嫌がってたし」
真琴のとてつもなくくだらない答えに、思わず真琴の髪の毛を鷲掴む。
両親に口酸っぱく『女・子どもに手を挙げてはならない』と教育されてきたオレの、最大の暴力だった。
「・・・オマエ、美紗に何した??」
「別に何も?? アイツ、何て?? どうせお兄ちゃんはあの嫌われ者に夢中だから、ワタシが何を言ってもあっちの言う事を信じるんでしょ??」
オレが殴らない事を知っている真琴は、髪を掴まれたところで怯まない。



