漂う嫌悪、彷徨う感情。


「部長なんて役職付けておいて、仕事が遅いくそジジイだなって思ったよね?? ごめんねー。 その通りだよー。 オレがもたもたしている間に気が変わったら、いつでも言ってねー。 無理に辞める事ないんだよー。 木原さんがいなくなるの、淋しいし困るしー。 もう、辞めるのやめない??」

部長は『部長』というだけあって、多くの仕事を抱えている。 ワタシの後任探しをしている場合ではないのだろう。 そうとは言わずに『淋しいし困る』という表現をしてくれる部長の優しさに、それでも『早く辞めたい』などと言う気にはならなかった。

「辞めるのをやめる事は出来ませんが、ワタシの事は後回しで構いませんから。 お忙しいのに私事で迷惑をお掛けして申し訳ありません。 ワタシの事は気にせずに、部長は仕事に戻って下さい」

会議室のドアを開け、部長に退室を促すと、『ホントにゴメンねー。 オレの事、嫌いにならないでねー』と言いながら、部長は自分の席に戻って行った。

正直、辛くて辛くて仕方がないのに、部長の愛くるしいキャラにちょっと癒され、ふと笑いが零れた。 そしてそれが溜息の様な吐息に変わる。

『もう少しの辛抱』が、もう少しではなくなってしまった。

自分で蒔いた種とはいえ、これからもこんな辛い日々が続くなんて・・・。