漂う嫌悪、彷徨う感情。



会社に着くと、社内のワタシへの視線は昨日より更に冷たいものになっていた。

当然だ。 結婚破棄をした挙句、浮気相手に会社まで迎えに来てもらう様な女を良く思う人間などいるはずがない。

これでいい。 悪者のまま退職すれば全部終わり。

あとは後任を待つだけ。 この苦しさも、もう少しの辛抱だ。

周りからのシカトと陰口を堪えながら、1人デスクで黙々と後任の方の為の資料を作成していると、

「木原さん、今ちょっとだけいい?? 会議室に来られる??」

部長に声を掛けられた。

「はい。 大丈夫です」

立ち上がり、部長の後を追って会議室へ。

テーブルを挟み、部長と向かい合って座ると、部長が口を開いた。

「木原さん、ごめーん。 ちょっとまだ後任の子が見つからなくて。 もう少し時間かかるかもー」

困り顔をして、すまなそうに両手を合わせながら『ペコ』っと頭を下げる部長。

「謝らないでください!! 急な申し出をしたワタシが悪いんですから!!」

正直、部長に呼ばれたのは後任が決まったからだと思った。

ガッカリはしたけれど、部長が悪いわけでは全くもってない。 謝ってもらう筋合いがない。 慌てて『頭上げてください』と部長の謝罪を止めた。