漂う嫌悪、彷徨う感情。


「オレ、美紗ちゃんの性格好きだよ。 それに、『真琴への仕返し』が目的で、美紗ちゃんをあそこに連れて行ったんだから、達成出来て何よりだよ。
オレ、美紗ちゃんの考え方も好きだけど、ちょっと損してるから教えておくね。 男が『甘え』を誘導している時は素直に甘えるのが正解だよ。 だって、甘えて欲しくて誘導してるんだから。 誘導していないのにも関わらず甘えるのは完全に不正解だけど。
つーか、嫌われるのが怖いとか言っておいて、今職場で嫌われ役買って出てるんでしょ??」

日下さんが意地悪な笑顔を返してきた。

「・・・佐藤さんを守る為です。 佐藤さんが嫌な想いをする方が辛いから。 だったら、自分が悲劇のヒロインにでもなったつもりで酔っている方が楽なんです」
 
言いながら情けなくなって、さもしい自分が嫌になる。

「美紗ちゃんってさ、計算し尽して嘘吐くくせに、大事なところで計算しないよね。 今の、『佐藤さんが嫌な想いをする方が辛いから』までで良かったのに。 それ以後の言葉、いらないから。 普通の計算出来る女子は言わないから。 どうして余計な本心言って、自分の事下げちゃうかな」

日下さんがしょっぱい顔で笑いながら、『バカだなぁ』とワタシの頭を撫でた。

『バカだなぁ』と言われているというのに、本当にバカなワタシは『イイ子イイ子』されている様な気分になって、何だか泣きたくなってきた。