漂う嫌悪、彷徨う感情。


「顔近い!! じっくり見ないでくださいよ!! てゆーか、行きませんよ。 彼氏でもない人と2人で温泉とか・・・。 有り得ないでしょ。 日下さんも、何を彼女でもない女を軽いノリで温泉に誘ってるんですか!! 充分浮ついてますよ!!」

両手で顔を隠しながら日下さんに抗議。

「軽いノリの方が来やすいかなーと思っただけ。 ノリは軽いけど、美紗ちゃんに手出したりしないから大丈夫だよ。 出したくないって言ったら完全なる嘘だけど、傷ついている人の傷を更に広げたいわけないでしょ?? 丁度オレも今、やや憔悴中だし、2人で気晴らし出来たらいいなってさ」

日下さんが『行こうよ行こうよ』とワタシの腕を揺すった。

「別に日下さんがワタシに手を出してきそうだなんて思ってませんよ。 自分に男性をそそる様な要素はないって分かってますから、そんな自意識過剰な事は考えていません。 ただ、どう考えても世間一般的に、付き合っていない男女が温泉に行くのはおかしいですって」

『と、言う事で行きません』と、自分の腕から日下さんの手を下ろした。