漂う嫌悪、彷徨う感情。


『日下さんのアホ!!』という念を黒目に込め、日下さんに視線で訴えると、日下さんが『真琴ちゃんの方を見てみ??』とでも言いたげに顎をクイッと動かした。

ドSなのか、この男。 そんなの無理に決まってるでしょうが。

断固拒否とばかりに、日下さんの方を見る事さえやめた。

真琴ちゃんの視線も、お店のスタッフさんたちの視線も、日下さんの視線も嫌で、ワタシの視線のやり場はもう、木目調のカウンターテーブルの木の年輪くらいしかなかった。

そんな、俯きながら年輪の数を数え始めたワタシの顔を、日下さんがいきなり掴んだ。

「見てくださいよ、オレの彼女。 可愛いっしょ??」

そしてそのままワタシの顔を真琴ちゃんの方に向けた。

心の準備なく、真琴ちゃんと目が合ってしまった。

呼吸が・・・・・・乱れなかった。

目の前にあった真琴ちゃんの顔は、どう見ても怒気を孕んでいたけれど、物凄く悔しそうだったから。