漂う嫌悪、彷徨う感情。


気まずくて、何か話題を振ろうと周りを見回す。

近くにラックがある事に気付き、そこにあった数多くのリーフレットの中から適当に1枚引き抜いた。 豪華海鮮料理を目玉にした温泉旅館のリーフレットだった。

「お・・・温泉!! いいですよね、温泉!! 至れり尽くせり上げ膳据え膳!! か・・・蟹!! ほじるの楽しいですよねー!! 無心になるっていうか・・・」

『見てください!!』と日下さんの傍にそのリーフレットを置くと、

「ココ、イイね!! 貸し切り露天風呂があるよ!! 一緒に入ろうね、美紗ちゃん♬」

日下さんはワタシの意図とは真逆に、ノリノリに悪ノリした。

違うのよ、日下さん。 そうじゃないのよ。 今のは『いい天気ですねー』と同等の会話繋ぎだったのよ。