漂う嫌悪、彷徨う感情。


日下さんとワタシが肩を並べてカウンターを挟み、真琴ちゃんと向かい合って座る。 それを他のスタッフが興味津々にチラ見を繰り返す。 他人事なら面白がって眺めたいだろうこの状態は、当事者には相当な心労。 だって・・・、

「国内でいいんですけどね、ちょっと豪華な感じの旅行をプレゼントしたいんですよ。 実は最近元カノからの電話が鳴りやまなくて、彼女に嫌な想いをさせちゃってまして・・・」

早速日下さんがぶっ込むから。 日下さんの暗に『迷惑です』の意を込めた言葉は、周りのスタッフに『あぁ、佐藤さんは元彼にしつこく付きまとっているんだな』という印象を付けただろう。

もう、冷や汗が止まらない。 中学時代にワタシに向けた悪意の表情をしているんじゃないかと思うと、未だに真琴ちゃんの顔を直視出来ない。

「・・・・・」

接客業なのに何も喋らない真琴ちゃん。

日下さん、さすがにやりすぎなんじゃ・・・。