VS IV Omnibus2 パペット



 翌日、プァンスはまた、こぢんまりとした姿に戻っていた。

 髪も、だ。

「どうなってんだ?」

 パペットだと分かってはいても、珍しい現象にアルバは、その短い髪を指差す。

「あたしの内燃機関は、普通の人間のと違うの」

 ぷいっと横を向くが、プァンスの朝食の手は止まらない。

 蓄積機関だの、内燃機関だの──まるで、自分を機械のように話をする。

 しかし、機械はあんな成長をしたりはしないし、人間の食物は必要としない。

 まあいいか。

「あぁ、そうだ…サンド」

 アルバは、彼に大事な話があった。

 妻と昨夜、話したことがあるのだ。

 まだらの視線だけが、ちらりと彼に向けられる。

「この仕事が終わっても、オレたちが生きてたら…」

 ちょうどチナが、厨房から次の食事を運んできたところだった。

「あんたらの、専属操縦士になってやってもいいぜ」

「専属シェフもつきますよ」

 くるりと、お皿を回すチナ。

 と、夫婦でカッコよく言ったというのに。

 サンドは無反応のままだし、プァンスはエーッという顔をしていた。

「ねぇ…アルバ」

 王子様が、少しいやそうにフォークを彼に向ける。

「なんだよ」

 てっきり喜ぶかと思ったのに、またもや肩すかしだ。

 彼らは、とにかくアルバを空回りさせないと気がすまないのか。

「そういうのを、何ていうか知ってる?」

 そのフォークを、ぷすっと次の食事に突き立てる。

「何が、だ」

 いらいらしながら、アルバは続きをせかす。

「そういうのを…死亡フラグっていうんだよ?」

 この仕事が、無事終わってから言ってよね。

 まったくもー、と。

 小娘は、ガツガツ食事を続行している。

「え…縁起の悪いこと、言うんじゃねぇぇ!」

 火を吹きながら怒鳴り散らすアルバを、チナがハイハイと微笑みながら諌める。

「でも…」

 吠えるアルバには、よく聞こえないほどの音量で、プァンスはこう続けていた。

「でも…考えといてやるわ」

 フォークを、くわえたままの──笑顔。


 だが。

 アルバの耳は、とてもとてもよかったのだ。