VS IV Omnibus2 パペット



「わかったわかった、パペットでも何でもいい…ちゃんと仕事は果たすぜ」

 アルバは、結局その結論を選択することとなった。

 過去の自分と、妻の目と──そのこまっしゃくれた小娘が、妻の料理を好きという言葉を信じて、だ。

 過去一度、彼らを移送したアルバは、きっちり今も生きている。

 本当に知られたくないと思ったのならば、記憶を操作するなんて回りくどいことをするより、さっさと殺してしまえばいいのに、だ。

 と、かっこよくアルバが、心の広い男っぷりをアピールしていたというのに。

「眠いか?」

 サンドの手が、プァンスの肩にかかっていた。

 彼女は、うつらうつらと船をこぎはじめているではないか。

 このアマ。

 肩すかしをくらって、アルバはグレかけたが──しかし、気が抜けてもいた。

 食って寝て泣いてわめいて。

 ただの小娘にしか見えないのに、世間では死の人形と呼ばれているのだ。

 尾ひれ、つきすぎだろ。

 アルバは、苦笑した。

 くったりした彼女を、サンドが抱き上げる。

 いつものように、寝室へ連れて行くのだろう。

「……」

 そんな、サンドの足が止まって。

 ゆっくりと振り返って、そのまだらの目に二人を映した。

「…彼女を、怖がったり哀れんだりしないでくれて…感謝する」

 礼を言う表情ではなかった。

 ただの、真顔。

 それでも、彼なりの感謝だということは、同じ男としてアルバには伝わった。

「んなこたぁ、どうでもいいから…ちったぁ夜は静かにしろよ」

 男に感謝されるなんて、こっぱずかしくて真正面から受け止められるものではない。

 アルバは、照れ隠しに夜のことをひやかしてやった。

 サンドが、ふと動きを止めた。

「食事中の彼女は…私にはどうにも出来ない」

 言い置くと。

 彼は、寝室へと消えて行った。

 へ?

 食事?

「食事っつったか、いま?」

 アルバは、唖然としながら側のチナに問いかける。

「サンドは、プァンスのご飯なんですって」

 うふふ。

 微笑む妻とは裏腹に、アルバの脳裏には『カニバリズム』なる、危険な単語が飛び交ったのだった。