VS IV Omnibus2 パペット



 アルバは、すっかり二人を警戒してしまったが、チナは上機嫌だった。

 なぁんだ、と。

 プァンスとサンドと、彼らは顔見知りだったのだ。

 だから、こんなにいろいろ、手に取るように分かる。

「ねえ、チナ」

 厨房にいる彼女のところに、プァンスが顔を出した。

 珍しいことだ。

 食事を終えたら、いつも眠る彼女が起きている。

「なぁに? おやつ?」

 チナは、次の食事の下ごしらえの手を止めた。

「おやつも欲しい~…でも、その前に聞いていい?」

 見えるのは、プァンスだけ。

 でも、すぐ物陰にサンドがいるのも分かる。

 あの香りがするのだ。

「なぁに?」

 おやつかぁ、何を用意しようかなあ。

 チナの頭は、半分だけおやつのメニューを考えていた。

「アルバ、私がパペットってこと、気づいたでしょ?」

 おやつ、おやつ、うーん。

 って、ん~?

 チナは、思考の半分を元の脳みそにくっつけた。

「パペット? ああ。そういえば、そんなことを言ってたかしら」

 答えた後、また半分をおやつに戻す。

「果物のタルトとかどう?」

 ぽんと。

 やっといい案が浮かんで、チナは手をたたいた。

 振り返ると、少し機嫌を損ねたようなプァンスの顔。

「タルトは好きじゃないのね…じゃあねぇ」

 脳内をふわりと飛び回る、パズルピース。

 どこにはまろうか、探しているかのようなその破片。

「違うって…タルトでいいの! そっちじゃなくて」

 チナのパズルピースを叩き落とすように、プァンスが割って入る。

「タルトね…じゃあ乗せる果物は…桃ね? そうでしょ?」

 瞬間。

 プァンスが、横を見た。

 彼女の夫がいる方だ。

 「どうしよう」──という、心配そうな横顔だった。