そうと決まれば行動は早かった。

 どこかへ消し飛んだ眠気のおかげで用意もスムーズに行えた。

 10時過ぎには用意を済ませることが出来たわけだけど、一週間も外泊すると言うのに着替えも荷物の一つさえ鷭さんはいらないと言う。

 「遠出をすると誰かに知られたくないんです。その辺をデートするような気楽さで外に出ましょう。既に新幹線の切符をとっていますが君の分はありませんから新しく買いましょう」

 過度にオシャレをしてはいけないと言われたため、余所行きのワンピースはクローゼットに戻し、引き出しからラフなTシャツを取り出しそれを着た。

 どの程度の遠出かわからないからオシャレをしたかったし、初めての旅行になるからと思ったけどあくまでも仕事だからとそれを鷭さんが止めた。

 「緊急時に備えて一応ですが走りやすい履き慣れた靴を履いてください」

 お気に入りの白いヒールは取り上げられ、たまにする夜の散歩(鷭さん付き添い)用のスニーカーを渡された。

 「これオシャレじゃないじゃない」

 「僕は君を連れていくことを妥協したのですから君もこの程度の融通は利かせるべきでしょう?それに言う事を聞くと約束しましたよね?」

 今からでも連れて行くのを止めてもいいぞと言われてる気がして慌てて靴を履いた。

 彼の注文は意外に多く、私が準備する全てを監視し事細かく指示してきた。

 「アクセサリーは落とした時なにかと都合が悪いので無しに」

 「髪飾りは目だないものを」

 「化粧は控えめに。君はそのままでも綺麗ですよ。あまり人目に付く印象的なメイクは避けてください」

 「はいはいはい」

 まだまだあるが聞いていたらきりがないので適当に流した。