鷭さんが帰ってきたのは翌日の朝だった。

 見知らぬ男性と共に帰宅し、寝ぼけた私を抱きしめる身体がやけに冷たかった。

 「…鷭さん?」

 「…おはようございます。寝坊助さん」

 「臥雲 旦陽(がうん あさひ)だ」

 自己紹介もそこそこに、学校へ行く礼ちゃんを送り出した。

 「…航の言葉を気にしちゃだめ」

 家を出る間際、礼ちゃんはそう言って私に背を向けた。

 気にしないわけない。

 だけど、抱きしめられた鷭さんの体が冷たくて、不安は一層深くなる。