「もし、今後彼女の身になにかあったら僕は生きていけない。僕が生きて彼女が死ぬなんてことは絶対にない」

 断言した鷭に臥雲は立ち止まった。

 「ぜったい?」

 「…はい。絶対にです。なので僕の身に何かあり、彼女と行動を共に出来なくなった時、君には彼女を安全な場所に隠してほしいのです」

 「…俺が?」

 「…君しかいない。なんせ敵の多い僕です。君しか共と言える存在はいない。お願いできませんか?」

 「…断る」

 静かな冷たい風が二人の頬に触れた。

 先ほどまでの鷭とは別人のような、据わった目が臥雲を見ていた。

 「…できる限り協力は惜しまない。身を隠す必要が無いよう取り計らえ。自分の後始末は自分でつけろ。そして彼女を一人にするな」

 「…」

 あっけにとられていた鷭は大きく息を吸いながら空を仰いだ。