「おはよう朝だよ、起きてください」

 まだ寝たりない瞼をこすり、体への強制的な覚醒を促す揺すぶりに薄目を空けて驚いた。

 目覚まし時計の役割を果たす有能な恋人は、顔中に真っ赤な血化粧をしていたのだから。

 眠いなんて言っている場合もなく飛び起きた私に、やれやれと呑気な彼が溜息を吐く。

 「毎度のことながら、日雀(ひがら)さんはよく寝ますよね。そんなに寝ているというのに成長する兆しはみえませんが」

 「ていうか、血!血が!」

 「ああ、これは他人の血しぶきですからお気になさらずに。それよりも早く起きて顔を洗ってきてください」

 「いやいやいや!血しぶき浴びた人間が呑気に人を起こさないでくれるかな?!」

 必死の抗議も空しく、鷭(ばん)さんはせかせかと起床を促してくる。

 「早く支度をしてください。今日から僕は数日仕事で留守にするんですから」

 時刻は早朝六時、23才ニートの私がなぜこんな朝っぱらから起こされなければならないのか。

 取り上げられた布団を取り返せばそんなことを言われた。