彼女は共に成長した自分をいつもいつも見続けている。

 これは、空にいる沙織が見た、もう一人の自分を描いた物語。

 なぜ、二人の沙織にしたのかは自分でもわからない。

 もしかしたら空にいる沙織は僕自身なのかもしれない。

 ストーリーは沙織が中学になるころから始まる設定。そして成長していくその描写をスポット的に抜粋し、短編連構成で組み立てる。

 どの場面まで描写するかはまだ決めていない。今、書ける部分を書いている。今書ける部品となる部分を書いている。

 そしてこの小説は主人公となる沙織の心の中をさらけ出すストリーでもある。人間の心理、それに伴う行動。喜怒哀楽この熟語がなす意味を掘り下げながら、それを沙織の心と照らし合わせて描写する。

 ストーリーの本筋は恋愛することの意味を投げかける内容にしようと考えている。沙織の成す恋愛で……

 プロット的に大枠が決まると、おのずと進んでいった。今まで見ていた考え方を変え角度を変え彼女の心の中を探る。自分なりに。

 夏休みの間書けるだけ書こうと思った。書けるとき少しでも一行でも多く。

 バイトと小説に没頭した。書くときはそれに専念した。沙織もそんな僕に協力してくれた。いろんなことを話して訊いて。嫌なことも楽しいことも悲しいこともさらけ出して話してくれた。

 そしてお互いの心は一つ一つ結び付いていった。

 出来た所を沙織に読ませてやると

 「ねぇねぇ、ここ違うよ。私はこう感じてたんだよ」

 「ええ、そんなとこ良く見ていたね。自分でも知らなかった」

 「うん、そう。だから私はあなたを好きになったと思う」

 「ちょっとぉ。勝手に盛らないでよ。私そんなんじゃない」

 「うん、わかった。じゃ、こうして……」

 彼女の言葉一つ一つで埋まっていった。僕一人で描く小説じゃない。

 僕たち二人で描く小説。愛する人に捧げるストーリだった。


 「達哉、ご飯で来たよ」

 「ああ、解った。いったん止めよう」

 テーブルには沙織が作った夕飯が並ばれていた。

 「お、美味そうじゃん。どれどれ」

 「美味しい」

 「うん、うまい」

 「良かった」沙織の口癖。

 椀を持ち味噌汁を啜る。一口啜る、二口啜る。そして三口啜る。

 うまい。ちゃんと丁寧に出汁を取ったしっかりとした味。