彼が残してくれた宝物


「伸は保育士の勉強していて、今、奏輝達の保育園で、実習してるんだ。」

「え?」

「今、僕は、兄の夢を引き継ごうと思って、保育士を目指してます。」と、彼は言った。

伊藤課長の夢を…

「たまたま、実習行った保育園に奏輝君と、律輝君が居て、彼らの母親の名前が桜さんと聞いて、もしかしてと、思ってました。」

「もしかして、じゃ無いだろ? こいつ、徹と仲が良かったから、毎月ここへ来てたんだ。」

「え? じゃ、私達がいつもここへ来てたの知ってたの? それで今迄黙ってたの?」

「あっいや、僕が来てたのは夕方で… 桜さん達が帰った後で… はっきりする迄はと… それで命日の今日なら…」

「酷い…」

「ホント伸は酷い奴だよな?」

『パッシン!』

私は彼を思いっきり叩いた。

「痛っ… え? なんで俺?」

私が叩いたのは、誠さんの頬をだった。

「私がずっと苦しんでいたのに… 伊藤課長のお宅に行った時も、あんたは伸君の事知っていて、他人のフルして…
許せない! 許せる訳ないでしょ!?」

「あ…ごめん。」

「もしかして… 私が聞いた事は全て嘘で、伊藤課長は自殺なの?」

「違う!」
「違います! 僕が話した兄の話は全て本当です。 信じて下さい。兄は自殺じゃなく、事故です!」

「律、奏、嘘つきのパパだけど? どうする?」

「僕は、一回だけは許してあげていいと思う。」と、奏輝が言うと、律輝は、
「奏は、甘いな! 一度嘘ついたら奴は、また嘘つくんだぞ?」

「パパは、違うもん! ねぇ違うよね?」

「ああ。 もう絶対嘘つかない! 約束する!」
と言って、誠さんは、奏輝と律輝に小指を出した。

「律も、許してあげなよ?」

「じゃパパ、徹パパに約束しなよ!」

え? 徹さんに?

「え? 徹に?」

「俺達には、徹パパもパパなの! でしょママ?」

「そうね? 皆んなで徹パパに約束しましょ? もう嘘はつきません。って? 伸君もね?」

私達は皆んなで徹さんのお墓に手を合わせた。