暫く会えなくなると、連絡があったのを最後に、彼からの連絡は途絶えてしまった。

彼からの連絡が途絶えて1ヶ月、胸騒ぎがして、徹さんに電話をしたが繋がらなくて、私は心配になり彼の部屋を訪ねた。

何度もインターホン鳴らしても、何度もドアをノックしても、彼は出てくれない。

『トントン!トントン!』「徹さん? 徹さん!」

お願い出て!

『ドンドン!ドン…トン…』「徹さん…」

どうして?

私の事嫌いになった?
やっぱり…
愛した人を見捨てる女は許せなかった?

なら…
なぜ私を抱いたの?
なぜ愛してるって言ったの?

愛されてると思ってたのは、私だけ…?
悲しみの海から救い出してくれたと思ってたのに…
全て嘘だったの…


悲しみに耐えきれず、私は、その場に泣き崩れてしまった。

「あの…そこの部屋の人、引っ越されましたよ?
もしかして、 あなた秋さんですか?」

え?

隣の部屋から、伺うように顔だけだした若い女性。

「…ハイ…」

「これ… 預かってますけど?」

え?

彼女に差し出された物は一通の封筒。

え?
徹さんから?

慌てて受け取ると、彼からの手紙だった。

そこには、『ごめん』の文字。
便箋にたった三文字… だけ?

私達は、三文字だけで、終わらせる程度の仲だったって事…

私は、声を上げて泣いた。
こんな終わりかたをされた悔しさ、悲しさ。

一人で恋愛してたのかと思うと、可笑しくもなった。
これは…私への罰。

徹さんが ”桜は何もしてない。罰を科すような事はしてない。” って、言ってくれたのも嘘… だった…の?

伊藤課長と、そして奥さん真由子さんの気持ちを裏切った、私への罰。
涙が溢れ、次第に苦しさや悲しさが、少しづつ消えて行くのを感じた。

結局私は、幸せになれない。
誰も幸せに出来ない。

そう思う自分が哀しくて、可笑しくなって、笑っていた。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。すいません。お騒がせしました。」

彼が残した手紙を握りしめ、隣の部屋の彼女に頭を下げ、その場を後にした。