闇に咲く華



自分でも意外だけれど、もしかするとこういうことを〝居心地がいい〟と言うのかもしれず。


「いいんじゃねえの」


ふいに白玖がそう言うので、思わず隣を見る。


明るい日差しが、白玖の髪にキラキラと降り注ぎ、銀色に輝く髪も、見慣れると悪くないと思えた。


「いいってなにが?」


私がそう聞くと、普段あまり表情の変わらない白玖が珍しく笑った顔を見せる。


「色々あって、今ここにいるって思えれば、それでいいんじゃねえのか」


色々あって、今ここにいる……。


けっして特別な言葉じゃない。


誰だって思い付くような、簡単な言葉だけど、私にとってはとても意味のある言葉に感じられて……。


「そう……だね」


小さく呟くと、白玖が私の方を見るから、慌てて視線を逸らす。


正直、自分でもこれほど心に響くとは思っていなかった。


どう誤魔化そうかと考えていると、ふっと笑った声が隣から聞こえた。


「俺、今んないいこと言ったか?」


「言ってない」


白玖から顔を背け、こぼれ落ちて来る涙を慌てて拭く。


「だよな、だったら泣くな」


「泣いてないし」


「声、震えてんぞ」


必死で隠そうとしているのに、白玖が顔をのぞき込んで来る。