「まさか亜沙美がママになるなんてね」



ベビーベッドですやすや眠る赤ちゃんから目を上げて、私は大学時代からの親友に肩をすくめてみせた。


以前よりふっくらした亜沙美は、とろけそうな顔で微笑んでいる。



「ねー。あたしもいまだにびっくりしてる部分があるよ。この半年ちょっとで、いきなり家族が2人も増えちゃって」



「彼とは長いから逆にきっかけがないって、飲みながら愚痴ってたの、ちょうど1年くらい前だったっけ。よかったね、赤ちゃんできて」



「うちの父親は、渋ーい顔してたけどね。まあ、この子を抱かせてあげたら、一瞬でどうでもよくなったっぽい」



そうでしょうね。


赤ちゃんって、理屈抜きに愛される存在だもん。


私は、相手がいるにもかかわらず、赤ちゃんには無縁な生活を送ってるけど。



赤ちゃんが、ふにふにと声をあげた。


寝言かな?


目をつぶったまま、小さな手をにぎにぎして、口元をひくつかせている。



と、私は赤ちゃんの足の裏に小さな傷があることに気が付いた。



「ねえ、足の裏、ケガしてない?」



亜沙美は赤ちゃんの足を、そっとつまんでみせた。


ちっちゃい。


かわいい。