ずっと、ずっと。


私は“普通”ではなかった。


だから、“普通”になりたい、と強く望んでいた。





小学三年生の夏。


私は両親と一緒に、せっちゃんの家に遊びに来ていた。


二週間前に喧嘩してから初めて会うせっちゃんと仲直りがしたくて、勇気を出してせっちゃんの部屋の扉をノックした。



『るんちゃん、ごめんな』



部屋の中から聞こえてきたのは、入ってもいい許可ではなく、謝罪の言葉だった。


慎重に扉を開いて、部屋の中を窺う。


視界に、部屋の隅で恐竜のおもちゃを相手に謝る練習をしていた、せっちゃんの小さな背中が映った。


びっくりした。


せっちゃんは怖くて、偉そうで、悪口ばかり言う人だと思っていた。



『るんちゃん、許してくれるか?』



でも、本当は優しい人だったんだ。



『また、るんちゃんに会いに行ってもいい?』


『いいよ』


『…………え?』



私はせっちゃんの隣に行って、微笑む。


せっちゃんは私に気づいて、目を丸くした。