胸が苦しい。


溢れる涙のせいで、視界が霞んでいった。



「高校生になって元気になったんだが……」



途中で話を途絶えさせた六沢先輩に、誰も深く言わせようとはしなかった。


元気になって“普通”になれても、体が弱かった過去はそのまま刻まれ続ける。


そして、過去は現在にも影響を及ぼした。



琉美は、自分自身のことをよく知っていたはずだ。


……その上で、平均よりも格段に短い寿命を犠牲にして、能力を使っていたのか?



「きっと、いやしの歌がかつてないほど多くの光を生み出したから、儚い命を一気に吸い取られてしまったんだと思います」



雛森はそう言うと、琉美に「ごめんなさい」と泣きながら囁いた。


能力の限界まで達した威力と、琉美の生命力の弱さが、終止符と引き換えに、こんな悲劇を起こしてしまったんだ。



「……琉美」



俺はまた、琉美の名前を呼んだ。


また、返事はない。