天気のいい今日は、屋上も中庭も先客がいて。
校舎裏や裏庭にも足を運んでみたけれど、数人の生徒がいてダメだった。
なかなか都合のいい場所が見つからない。
「俺の秘密基地なら、誰もいないかも」
「秘密基地?」
「女子に追いかけ回された時の避難所として利用してるんだ」
江藤先輩って、プレイボーイって噂されてたんだっけ。
モテる人は大変だなぁ。
でも、秘密基地ってどこ?
「ついてきて」
私と怜司くんと利一くんは一度顔を見合わせてから、江藤先輩を先頭に歩いていった。
到着した場所は、美術室だった。
絵の具の匂いが漂う室内に、足を踏み入れる。
「美術部が昼にここを使うことはないし、美術の授業で居残るのは放課後だけって決まりがあるから、昼に美術室に来る奴はいないんだ」
江藤先輩はそう言いながら、奥に押しやられた机を二台、椅子を四脚並べてくれた。