私の耳が、遠ざかっていく足音をすくった。


この足音は、まさかイービルの……?


急いで足音をたどろうと、踊り場を去ろうとした。


しかし、せっちゃんが私を行かせまい、とロープで私の足を払おうとする。



「アルディ・ソード」



呪文を唱えて、壁の一部で即席の剣を作った江藤先輩が、私の後ろに剣を刺し、私にロープが当たらないように食い止めた。


剣に突き当たり勢いを失くしたロープは、私の足にかかる前に床に伏せる。



「ロック・クレイ」



江藤先輩は、いつもは防御に使っている魔法を応用して、階段を滑り台に変えてくれた。



「六沢は俺がなんとかする!魔法が消えないうちに、早く行け!」


「ありがとう、江藤先輩」



仲間がいてよかった。


一人だったら、せっちゃんに足止めされていた。



私は滑り台で一気に下りる。


足音はもうほとんど聞こえない。


でもイービルの殺気が、くすんでいっているが、かすかに残っている。