――遡ること、十分前。


琉美先輩が出て行った後の保健室。




僕は、窓脇に肘をついて頬杖をしながら、窓からプールを眺めていた。


琉美先輩、大丈夫かな?


待ち合わせ相手は、なんとなく想像がついていた。


やっぱり、行かせるんじゃなかったかな。


脳内に満ちたネガティブな考えにふけっていく。



すると、誰かが保健室の扉をノックし、開けた。


保健医が職員室から戻ってきたのかもしれない。


振り返ると同時に、扉が閉まる音が小さく聞こえてきた。



「久賀、久し振り」


「江藤先輩……」



江藤先輩は、琉美先輩のカバンが置いてある椅子の、隣のパイプ椅子に座った。


どうして、江藤先輩がここに?



「『どうして、江藤先輩がここに?』って顔をしてるね」



ズバリ的中されて、ギクリと肩を跳ね上げた。


僕のわかりやすい反応に、江藤先輩は含み笑いをする。